「知らなかったのだろう」

先日、父親の墓参りに行った。

数ヶ月前に、霊園を運営していた会社が自己破産。
それ以降、墓地の水道は使えなくなり、ゴミの回収もなくなり、
管理事務所付近には小さな札が掛けられている。

「水道は使えません」
「花の処分はできませんので、お持ち帰りください」

私は近くに住んでいるので、そうした事情も知っているし、
花を持ち帰ることもできる。水道が止まって初めて行ったときは、
車に積んであったペットボトルの水を使った。

しかし、その日、花立てを持って何カ所も水場を回っている方を見かけた。        どうしたのだろうと思い声をかけると、水が出る場所を探していたらしい。

居ても立ってもいられず、持っていたペットボトルの水で花立てを洗ってもらい、
さらに花立ていっぱいに水を入れた。

話を聞くと、その方は大阪から自転車で来たのだという。

きっと、霊園の事情など知るよしもなかったのだろう。

「ありがとうございます」

そう言ってもらえたが、こちらこそ少しお役に立てて良かったと思った。

困っている人を見かけたら、できる範囲で手を差し伸べる。               そんな大切さを改めて感じた墓参りの日だった。

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